下記の記事に続いてコンクリート工学Vol.55No.9の特集:生産性向上に係るコンクリート技術の現状から自分用にプレキャストコンクリート製品のことを簡単にまとめようと思います。
プレキャストコンクリート製品のメリット
プレキャストコンクリート製品のメリットは一文でまとめると、早期完成における経済活動の活性化や交通移動時間の短縮等社会便益の向上効果が見込める工期の短縮である。
それを実現するためのメリットは以下のとおりである。
- 工期の短縮
- 現場作業の省力化・省人化
- 品質管理および検査等の現場管理の軽減
- 安定した環境での製作による品質の安定
- 建設現場における環境負荷の低減
- 建設現場における周辺環境への環境の低減
- 建設現場における安全性の向上
- 部材性能の確認が可能
- 建設現場の空間的制約や環境条件の制約への対応
- 特殊な材料を使用した耐久性の向上(工場製作では特殊材料は使用しやすい)
- 軽量化による効率化
プレキャストコンクリート製品のデメリット
- 地下構造物やトンネルなど水密性が求められる場所では、プレキャスト部材の接合部の止水性能に劣る
- (構造上、接合部の数が多くなるため適切な処理をしなければ、水や塩化物イオン等の劣化因子の影響を受け、早期に劣化する恐れがある。)
- 作業の簡略化により型枠大工・鉄筋工の技術が衰退する
- 運搬上の制約を受ける
プレキャストコンクリート製品の普及に向けての課題
過去5年間の利用率(セメント全消費量に占めるプレキャストコンクリート製品の割合)は若干の増加傾向はあるものの約13%であり、北欧の40%超えに比べると活用が推進されていない状況にある
プレキャストコンクリート製品の課題は以下のとおりである。
①適切な積算手法の整備
現状の積算手法は初期コストのみで評価され、材料自体は場所打ちコンクリートよりも20%程度高くなっているため採用が見送られている。
プレキャストコンクリート製品の利点の一つである工期短縮を加味すると場所打ちコンクリートよりも安くなる場合もあるため、積算手法に工期による要素も加味できるように整備する必要があると言える。
工期短縮により現場作業の省人化・省力化にも繋がり、今後10年間で110万人の建設技能者が離職する業界(現状約330万人)において今後の価値が高まることが予想される。
②設計指針・基準の整備
プレキャストコンクリート製品工法は、場所打ち工法の一部と置き換えることにより発展してきた経緯があり、指針類も場所打ち工法を基本とし、部分的に記載されているだけであり、プレキャストコンクリート製品に適した技術指針等が十分に整備されていない状態である。
特有の問題点に対し、設計から施工まで一連での整備により、設計時または施工時の手戻りがなくなり、普及に寄与すると考えられる。
③形状の規格化
コスト低減する手段としては、規格化し、型枠の転用回数を増やすことにより型枠費の低減ができ、製品価格を下げることが可能となる。
現状は現場ごとの最適断面(最小断面)が設計時に採用されるため、その断面に応じた型枠を現場ごとに作る試算となっている。そうすると型枠の費用がかさみコスト面で場所打ち工法に劣り、実採用には至らないというケースがある。
実採用につなげるためのコスト低減を目的として形状の規格化を進める必要がある。
規格化された製品から選択することにより、設計の効率化や製造および施工時の作業単純化、自動化および機械化に繋がり、工場内での省力化、省人化に繋がる。
その他留意点
- 規格化等の推進のために必要なデータの収集・蓄積を進めているものの、不足しており、継続的に進めている。
- プレキャストコンクリート製品は製造効率を高めるため、蒸気養生を用いられているため、それらの混和材料にあたっては蒸気養生を考慮して品質確保に努める必要がある。
感想
- 北欧の普及率40%(日本は12%~13%)を鑑みると伸びしろのある分野だと感じた。
- 普及の一番の障害が積算手法という技術的な要素がなく、かつ、法律のように改訂が非常に難しいわけでもないのが残念だと思った。それこそ全体最適の観点から一刻も早く積算手法に工期の要素を加味するべきだと思った。
- 費用、作業の単純化に伴う品質向上の観点から可能であれば断面の規格化も進めるべきだと思った。